23. NHK プロフェッショナル、謙さん人生最大の挑戦

 

プレビュー公演中はほぼ毎週舞台を見にいった。舞台の変遷が観れるのは今しかなかったから。開幕してしまうと、変更はなくなり、舞台はほぼ同じことの繰り返しとなる。しかし、プレビュー中は実験の繰り返しなので面白い。そして、やはり謙さんがどう変わるかを見たかった。毎日のようにNHKのカメラマンが同行していたのは、後ほど「プロフェッショナル」のドキュメンタリーで明らかになったが、やはり苦悩をしていたのがわかった。

“俳優・渡辺謙には、若い頃から貫き通してきた流儀がある。それは‘断崖絶壁であがく’がごとく精一杯仕事に向き合うことだ。渡辺は次のように語る。「とりあえず安全なところで自分のこう安全でひっかかりやすいところにやっていくというよりかは、精一杯手を伸ばして足を伸ばして、自分の体のどこまでそういうものをひっかけてしかも上まであがっていけるかということをトライしないと、僕はいけないと思うんだよね。まあ言ってみれば崖をよじ登るみたいに。そうやってあがいているのが全てだと思っているので。」

そして今回の挑戦、ブロードウェイミュージカル「王様と私」。歌もナマの英語の舞台も初体験の渡辺にとってそれは、またしてもあがきの連続となった。ギリギリを強いられる現場であがき続けること、その姿勢が渡辺をさらなる高みへと導いてきた。渡辺が芝居をするとき、大切にしていること。それは、日々新しい何かを試し続けることだ。より「面白い芝居」とは、どんなものか。渡辺は、まず思いついたこと、その時の感情を素直に表現してみる。そして次に同じ場面を演じるときにはそれを惜しげもなく捨てて、また新しい芝居を繰り出す。そうすることで、より『面白い芝居』へと時々刻々と塗り替えていく。

今回渡辺は英語が足かせとなる難しい局面に幾度もぶつかった。だがどんなに追い込まれても、新しい芝居を試すことをやめなかった。芝居を固めてしまえば、そこで新しいものが生まれる可能性は潰(つい)えるからだ。渡辺は次のように語っている。
「とにかく試すんですよ。可能性を試す。恥をかく商売だと思ってるから。捨てて塗り替えて捨てて塗り替えてっていうことをする、ある種の勇気を持ってる奴が最後には勝っていく、というかな」。渡辺が世界の第一線で闘い続けられてきた裏側には、こうした弛(たゆ)まぬ姿勢がある。” 

NHK プロフェッショナル 「渡辺謙55歳、人生最大の挑戦」より

そして、その信条は舞台の上で表現されていた。舞台が始まってからは英語づけの毎日にしたらしい。その甲斐あって、回を追うごとにどんどん良くなっていき、演技も深まり、やっぱりこれが一流の役者たるものかと思わせた。プレビュー開始当時はさすがの謙さんも疲れがたまっていたようで、公演後のサインをしないでマスクをして他のとりまきと一緒にすぐに帰る姿が目立ったが、それもプレビュー後半になると、公演後にサインに応じる余裕が見えてきた。

オープニング数日前にプレビュー公演を観に来た友人たちが謙さんに素敵なメッセージボードをつくってくれました。

もうすぐオープニング!

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