29. ありがとう、謙さん

トニー賞が終わり、盛り上がっていた高揚感も次第に薄れていき、ケリーさんは一週間インフルエンザで倒れたり、他のメンバーも怪我に悩まされたり、休む人もちらほら出てきた。謙さんは半年間という期間限定だからか、最後まで気は抜かないという気迫が感じられ、常に前向きで前より良い舞台にしようという心意気が伝わってきた。

ちなみに、23. NHK プロフェッショナル 謙さん人生最大の挑戦 のドキュメンタリーを覚えているだろうか。このドキュメンタリーを録画し、DVDにして、父が日本から持ってきてくれた。それをある日、公演中は子役の親は暇なので、DVDプレーヤーを持ってきて、ロビーで皆で見ていた。皆、リハーサルや謙さんのアパートの中などの貴重な映像に食い入るように見ていた。

そしてこの時、思いがけないことが起こる。

ちょうど演出家バート氏と謙さんのやりとりを見ている時、劇場の中からなんとバート氏本人が友人と一緒に出てきた!! 生バート!!普段は中々会わないのにこんな場面で遭遇。。バート氏は特に驚かずに、「へー、こんな番組になってるんだねー」と余裕な感じで一緒にしばらくDVDを見ながらバート氏本人の解説入りで談話。「そうそう、バンクーバーでゴジラの撮影をしている時に会いに行ったんだ。」「ケンはすごいよ。今はこの時より(2-3月)すごく良くなってるね。英語も3人の先生についてすべての発音がきれいに聞こえるように四六時中がんばったんだ。毎日開演二時間半前に劇場に入って準備する。すごい努力家だよ。」と褒めてました。そして、友達と一緒に談笑しながら去っていった。

劇場中では2幕目の途中。この時空を超えた偶然に唸るのみ。

5月後半に日本からやって来た父と凛ちゃんと一緒に公演後に謙さんの楽屋に初めて入れていただいた。2回公演後なのに疲れも見せず、私が何回も舞台に足を運んでいるのを知っているのか、謙さんは開口一番「良くなったでしょう?」と少年のように目を輝かせ、私が「プロフェッショナル」を見たと言うと、恥ずかしそうに照れて、私が「Puzzlementはもう完成されてますね」と感嘆して言うと、うんうんと嬉しそうだった。

そして謙さんの7月12日の最後の公演は感動的だった。

相棒のケリーさんは泣かないようにこらえているのが分かる。でもShall We Danceでこらえきれなくなって、最初のダンスで涙してしまった。それを見て、謙さんも顔を歪める。最後の王様が亡くなるシーンでは、皆ここぞとばかりに泣いていた。舞台でも王様として皆を引っ張っていったけど、舞台以外でも皆を引っ張っていったリーダーだった。人一倍周りに気遣って、子供たちにもちょっとしたギフトをくれたり、ポトラックパーティーでカレーをご馳走してくれたり、最後はキャスト一人ひとりに手書きのカードをしたためてくださった。

 

この最後の公演は内緒で当時の大統領夫人、ミシェル・オバマ夫人が観劇されていた。最後のカーテンコールの中、ミシェル夫人は謙さんと子供たちにもハグをくださった。りんちゃんもミシェル夫人とハグ!

 

ありがとう、謙さん。来年謙さんが帰ってくるまで、凛ちゃんも私もがんばります。

公演後のパーティーで。りんちゃんはちゃっかり謙さんの隣にいるのだ。^_^

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