4月16日はケリーさんの誕生日と共に、一年前の「王様と私」のオープニング・ナイトの日。その日を記念にケリーさんも謙さんも一緒に舞台を去ることにした。ケリーさんは子供たちとの相性も抜群で、りんちゃんも可愛がってもらっていた。王様が亡くなるシーンで、「アンナ先生、行かないで!」と子供たちがアンナ先生の周りに集まるシーンでは、アンナ先生の前に行くため、ケリーさんも子供たちに手を差し伸べる時に毎回りんちゃんの頬を優しく撫でてくれた。りんちゃんもこのシーンが楽しみだったようだ。
ケリーさんはこのThe King and Iのキャストやスタッフにかなり愛着があったようで、舞台を去るのもとても感情的になっていた。でも、週に8回公演の上に唯一の休日もコンサートに出かける日も度々あり、体力的にもきつく、何回か病気で休演する時があった。子煩悩のケリーさんが毎日かわいい二人の我が子をおいて舞台を続ける生活は家族にとっても容易ではなかっただろうことが想像できる。日本のミュージカルは主演のダブルキャストがあるが、ブロードウェイは必ず看板役者が表に出るので、週の半分ずつをスター二人が掛け持つということはしない。ケリーさんは週に8回の舞台生活に一旦ピリオドを打ち、家族との時間を優先し、たまにコンサートをすることにしたようだ。
謙さんとも本当にこれで最後。りんちゃんはこの舞台がきっかけで将来は女優になりたい!という夢ができたようだ。いずれは映画で謙さんと共演するという夢がまたできた。ありがとう!謙さんとケリーさん。
りんちゃんの最後の2週間は新たな王様とアンナ先生が行き来し、新しい代役の子役がリハーサルに来ていた。センチメンタルな気分に浸る暇もなく、The Show Must Go Onである。しかし、終わりが近づくにつれ、今まで味わったことのないような不思議な感情や思いが駆け巡ってくる。学校や会社も毎日通うものだが、パフォーミングアーツのプロの世界で毎日顔を合わせると違う絆が産まれる。特に楽屋では毎日いろんな裏方の人と顔を合わせて、大人とも会話を合わせるのが得意なりんちゃんは「大人の友達」が多くなった。衣装担当のパトリックや子役のお世話係を始め、マイク担当、かつら担当、ステージマネージャー、カンパニーマネージャー、などいろんな人にお世話になった。こういう繋がりはかけがえのないものである。
そして、最後の日はもう一人卒業する子役とともに、小さなパーティーを開いてもらった。そしてサプライズとして、ケリーさんやお子さん二人も一緒に訪ねてきてくれた。皆の心あたたまる言葉に胸が熱くなる。ずっとがんばって笑顔を保っていた娘も、家に帰ってから号泣。。。自分で決断したこととはいえ、胸にぽっかり穴が開いてしまったようだ。舞台に毎日立っているパフォーマーにしか分からない気持ち。よく今までがんばったね。
また次の冒険が始まるよ。